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機関誌「産業立地」バックナンバー一覧

機関誌「産業立地」

VOL.61 No.3 2022年5月号
≪特集≫
データセンターの地方立地考


【高まるデータセンターの最適配置の重要】
 社会・産業のデジタル化が進み、データを活用した新たなビジネスの創出と、それを通じた社会課題の解決が期待される中、データの収集・伝達・処理を担う5G、通信網、そしてデータセンター等の「デジタルインフラ」の重要性が再認識されている。これらの整備にあたり、2021年10月から経済産業省と総務省による「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」が開催され、学識者や企業関係者、関係省庁による議論を経て、今年1月に中間とりまとめが公表された。
 デジタルインフラの一角を成すデータセンター(以下、DC)の拠点整備については、大都市圏、とりわけ首都圏への一極集中に伴うレジリエンスの観点から、以前より最適配置の重要性が叫ばれており、菅内閣の成長戦略会議や、岸田内閣のデジタル田園都市国家構想実現会議の場でも議論されてきた。この有識者会合の中間とりまとめでは、これまでの議論を一歩推し進める形で、DCの設置にあたって重視される条件を整理した上で、設置に係る初期投資や電力・通信インフラの整備費等への財政支援、設置に前向きな自治体の募集や意見交換の実施など、国による具体的な取り組みの方向性を提示した。これを受けて、すでに150以上の自治体が国との意見交換を行っており、100を超える自治体から候補地の提示があったという。

【条件整備の難しさの一方、地方立地に繋がる動きも】
 DC誘致に意気盛んな自治体が続々と名乗りを上げる一方、DCの立地条件は、通信環境や電力供給に対する優先度の高さなど、一般的な工場や物流施設とは異なり、条件整備のハードルは高い。自治体側が提示している候補地にしても、事業者側の基準に照らしてもなお候補地と呼びうるかどうかは未知数と言える。
 翻ってDCを取り巻く状況の変化に目を向けると、従前からの課題とされるレジリエンスの強化に加え、クラウドの利用拡大に伴う大規模化(ハイパースケール化)、脱炭素化への対応、エッジコンピューティングの進展など、国の政策主導と並行する形で、地方立地に繋がるような動きも見られる。
 DCの地方立地の実情や今後の動向を探るべく、本特集では、最適配置の実現に向けて様々な政策を展開する経済産業省と、DC適地としての北海道の優位性を提唱する北海道大学の山本強名誉教授よりご寄稿いただいた。さらに、当センターのレポートでは、DCの多様性を示す一例として、テクノロジー企業・㈱ゼロフィールドによる福井県敦賀市へのDC開設の経緯と、DCの地方立地の展望について取りまとめた。加えて、前述の有識者会合の座長を務められた慶應義塾大学の村井純教授には、今号の巻頭言をお寄せいただいている。
 果たしてDCの地方立地の時代は訪れるのか。この問いに対する明確な答えは、残念ながら本特集の中にもないが、自らの地域へのDCの立地可能性について思慮を巡らす機会となれば幸いである。


≪目次≫

視点

データセンター地方分散への道
慶應義塾大学 教授(内閣官房参与(デジタル政策担当))村井  純


富士河口湖町長 渡辺喜久男
聞き手:一般財団法人 日本立地センター 専務理事 上野  透

特集
データセンターの地方立地考


データセンターの最適配置に向けた国の政策展開
経済産業省 商務情報政策局 情報産業課

北海道から考えるデータセンターの分散化とデジタル国土軸
北海道大学 名誉教授(北海道ニュートピアデータセンター研究会 代表)山本  強

株式会社ゼロフィールドの事例に見る地方型データセンターの一形態
―福井県敦賀市へのデータセンター開設についてー
一般財団法人 日本立地センター 企画調査室 次長 渡邉 章央

地方圏におけるデータセンター立地の展望
一般財団法人 日本立地センター 企画調査室 次長 渡邉 章央

誘致人列伝
富山県 商工労働部 立地通商課 企業誘致係長 大蔵 良輔 氏

新規賛助会員紹介
一般財団法人 機械振興協会

センターニュース
第33回 産業立地実務研修会のご案内(予告)

企業立地の動き
2022年2月・3月分(110件)

伏流水


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