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機関誌「産業立地」バックナンバー一覧

機関誌「産業立地」

VOL.60 No.6 2021年11月号
≪特集≫
地域最前線 ―「グリーン社会」実現への挑戦

【脱炭素は“宣言”から“実行”の段階に】

昨年10月の菅首相(当時)による「2050年カーボンニュートラル宣言」と、これに続く今年4月の「2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減する」との表明以降、脱炭素社会の実現に向けた様々な施策が打ち出されている。今年6月には、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が改訂され、経済と環境の好循環に繋げるための方策がさらに具体化された。
前述の目標達成の鍵を握るのが、再生可能エネルギーであることに異論を唱える人は少ないだろう。現に今年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」でも、2030年度の電源構成に占める再エネの割合が従来目標の22~24%から36~38%へと大幅に引き上げられ、主力電源としての位置付けがいっそう鮮明となった。
ただ、分散型電源である再エネの導入拡大には、エネルギーの地産地消を意識した、地域の主体的な取り組みが不可欠とされる。前述の国の方針に同調し、「ゼロカーボンシティ」を宣言する自治体も479(今年10月末時点)と全国に拡大しているが、真に求められるのは“宣言”のその先の“実行”だ。
【地域発の「脱炭素ドミノ」への期待】
国が推進する施策のうち、地域における再エネの導入拡大の柱とみなされるのが、改正地球温暖化対策推進法(温対法)と「地域脱炭素ロードマップ」である。
今年5月に成立した改正温対法では、再エネの導入拡大がカーボンニュートラルの実現だけでなく、地方創生の推進にも資するとの観点から、再エネの活用事業に関する計画・認定制度が創設され、自治体が積極的に関与する形で、地域内の合意形成を図るための仕組みが整備された。また、今年6月の国・地方脱炭素実現会議による「地域脱炭素ロードマップ」では、2030年度までに100か所以上の「脱炭素先行地域」を創出し、国の積極的な支援の下、自治体や地元企業、金融機関が中心となり、地域特性に応じた脱炭素事業を実施するとともに、先行地域で得られたモデルを横展開し、地域発の「脱炭素ドミノ」を起こすとの方向性が示された。こうした国の施策に共通するのは、「地域こそが脱炭素のエンジンである」という明確なメッセージである。
さて、前述の「グリーン成長戦略」では、今後成長が期待されるエネルギー関連産業として、洋上風力や太陽光、地熱といった次世代再生可能エネルギーや水素、燃料アンモニアなどが挙げられており、「地域脱炭素ロードマップ」でもこれらの積極的な利活用に言及している。そこで本特集では、次世代エネルギーの最前線を捉えるべく、有識者や先進地域の方々より、各分野の最新動向や地域への導入可能性を中心に解説していただいた。また、多様なエネルギー資源を武器に、独自の企業誘致戦略を展開する北海道石狩市にもお話を伺っている。本特集が微力ながら地域発の「脱炭素ドミノ」を動かす力となれば幸いである。

≪目次≫

視点

東工大ゼロカーボンエネルギー研究所の開設 ─カーボンニュートラル社会実現を目指して─
東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所 所長 竹下 健二

伊那市長 白鳥  孝
聞き手:一般財団法人 日本立地センター 専務理事 上野  透

特集
地域最前線 ―「グリーン社会」実現への挑戦


水素エネルギーで未来を拓く水素先進都市「周南」の取り組み
周南市 産業振興部 商工振興課 新産業推進室

日本における洋上風力発電の導入可能性
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 経済分析ユニット 尾羽 秀晃

地域密着型電源としてのソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)への期待
千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役 馬上 丈司

地域と共生する地熱発電
京都大学経済研究所 先端政策分析研究センター 研究員 山東 晃大
一般財団法人 日本立地センター 企画調査室 次長 渡邉 章央

誘致人列伝
福島市 商工観光部 企業立地課 副主査 佐藤 志保美 氏

イノベーションネット通信
イノベーションネットアワード2021経済産業大臣賞受賞 株式会社まちづくり松山の取り組み

企業立地の動き
2021年8月・9月分(71件)

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